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『バンド期』

■専門学校を卒業してからも
もちろんプロを目指して音楽活動の日々

バイトと音楽に明け暮れていました。

そしてバイトのシフトは平日を休みにして
必ず毎週そのスパイスカリーのお店に通いました。

高槻から四ツ橋のそのお店まで
往復二時間以上の道のりを毎週必ず。

今思えば、そのころから音楽とスパイスカリー
という人生の二本柱が決まっていたのだと思います。

ただ、バンドは結成と解散を繰り返し
カリーも作っては平凡な仕上がりで

大きな進展は無い時期に入っていました。

あのカリーを家でも食べたい!
どうしても作りたい!

でもまだそのカリーでお店を出そうとは
思うはずもなく

バンドでメジャーデビューするんだと
それだけを考えて人生を進んでいました。

『メタリカ』『メガデス』『パンテラ』
『アイアンメイデン』『ジューダスプリースト』

『スリップノット』『コーン』

『モトリークルー』『レニークラビッツ』
『X』『ラウドネス』『ラルクアンシエル』etc

カリーのような刺激的な音楽を好んでいたのも
この頃でした。

『カリーへの道のり』

■音楽にもカリーにものめり込んでいった
学生時代。

カッコいい演奏をしたい
素晴らしい曲を書きたい

毎日毎日
スタジオ練習に曲作りに勤しんだ頃

それと同時に美味しいカリーが作りたいと
色々試してもみた。

鶏ガラで出汁をとってみたり
水ではなくて野菜ジュースを使ってみたり

でも最終的には市販のルーを入れるという
オーソドックスな仕上がり

目指すスパイスカリーには似ても似つかぬ
お粗末なものでした。

今であれば本もネットも存在しますが
当時の僕には何の手がかりもありません。

しかしこの様な作業を繰り返しているのは
僕だけではありませんでした。

その学校に通っている同級生や先輩
恩師までもが皆同じように

挑んでは失敗の繰り返しだったのです。
皆スパイスカリーの虜でした。

『唯一無二』

■僕たちはプロミュージシャンを目指していた。

当時は『X』(現在のX Japan)が大好きで
他のバンドにはない強烈な個性

そのルックスと音楽は僕を虜にした。

その中でもベースをしていた僕にとって
ベーシストの『TAIJI』は強烈にカッコよかった。

それまでのベーシスト像を覆す
ルックスとテクニックとパフォーマンス

その全てが憧れだった。
もうそれ以外見えなかった

彼らの掲載されている雑誌はすべて買ったし
TVも録画した

髪の毛も伸ばした
ベースも『TAIJI』モデルは同じものを買った

レコーディングで使ったミュージックマン
と雑誌に記載されていたら

当然のようにミュージックマンも買った

もちろんアンプも衣装も

全部合わせたら外車が買えるくらいは
つかっている。

そのくらい没頭できたのは幸せかもしれない。

その『X』と『スパイスカリー』の
『唯一無二』感が

僕の音楽人生とスパイスカリー道を
リンクさせることになった。

『スパイスの不思議』

■「akiまたカレー行こうやー!」

僕を誘ってくれる人は昔から少ない。

だから貴重な機会は受け入れなければ
もう一生誘ってもらえないかもしれない

そして不思議なことに
あれだけ辛くて苦痛だったのにもかかわらず

もう一回行ってもいいかな
とも思えていた。

今考えるとそれがスパイスの不思議なのだ。

もう一度行ってみよう

また何分も並び、何分も待ち
そして食べ始めた

ん?辛い!
でも前回より大丈夫だ!

イケる!いけるぞ!
この暗さ!この香り!このスパイス感!

これがスパイスカリーというものかー!

この経験が
後の人生に大きな影響を与えるとは

プロミュージシャンを目指す僕は
想像もできなかった。

『初めてのスパイスカリー』

■その店内は独特で、相席は当たり前
メニューは手書きのクリアファイル一枚(当時)

チキン、キーマ、ラムだったかの
三種類から、友達おすすめのチキンを。

注文してから10分経っても来ない
15分経っても来ない。

でも誰も何も言わないので
大人しく待っていると

20分後くらいにようやく到着したその姿は
これまで見たこともないような

銀のワンプレートに、黄色いご飯
赤い油に浸かったチキン

そして野菜スープと漬物風のもの二切れ。
いったいこれは何なんだ。

友達にカレーだと言われたから来てみたのに
明らかに違う。これは今までのソレとは程遠い。

こんな裏切られ方は初めてだ。
…っていうかそもそもキーマって何なんだ?(当時)

仕方なくスプーンでチキンを一口。
正直、違和感だらけで美味しいかどうかすらわからない。

そして辛い!辛すぎる!
慌てて野菜カリーを食べると熱い!熱すぎる!

いや、野菜が熱いのではなく
チキンが辛すぎるのだ!

そして水を飲み干し
漬物風(アチャール)のソレを一口

これは最高の箸休めに思えた(スプーンだけど)

しかし残り一切れ!

ヤバイ!

でも友達は平然と食べている。
ここで辛いとは言えない

友達二人が食べ終わりそうになる中
僕も必死にかきこんだ。

もう二度とここに来ることは無いだろう。