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『カリーへの道のり』

■音楽にもカリーにものめり込んでいった
学生時代。

カッコいい演奏をしたい
素晴らしい曲を書きたい

毎日毎日
スタジオ練習に曲作りに勤しんだ頃

それと同時に美味しいカリーが作りたいと
色々試してもみた。

鶏ガラで出汁をとってみたり
水ではなくて野菜ジュースを使ってみたり

でも最終的には市販のルーを入れるという
オーソドックスな仕上がり

目指すスパイスカリーには似ても似つかぬ
お粗末なものでした。

今であれば本もネットも存在しますが
当時の僕には何の手がかりもありません。

しかしこの様な作業を繰り返しているのは
僕だけではありませんでした。

その学校に通っている同級生や先輩
恩師までもが皆同じように

挑んでは失敗の繰り返しだったのです。
皆スパイスカリーの虜でした。

『唯一無二』

■僕たちはプロミュージシャンを目指していた。

当時は『X』(現在のX Japan)が大好きで
他のバンドにはない強烈な個性

そのルックスと音楽は僕を虜にした。

その中でもベースをしていた僕にとって
ベーシストの『TAIJI』は強烈にカッコよかった。

それまでのベーシスト像を覆す
ルックスとテクニックとパフォーマンス

その全てが憧れだった。
もうそれ以外見えなかった

彼らの掲載されている雑誌はすべて買ったし
TVも録画した

髪の毛も伸ばした
ベースも『TAIJI』モデルは同じものを買った

レコーディングで使ったミュージックマン
と雑誌に記載されていたら

当然のようにミュージックマンも買った

もちろんアンプも衣装も

全部合わせたら外車が買えるくらいは
つかっている。

そのくらい没頭できたのは幸せかもしれない。

その『X』と『スパイスカリー』の
『唯一無二』感が

僕の音楽人生とスパイスカリー道を
リンクさせることになった。

『スパイスの不思議』

■「akiまたカレー行こうやー!」

僕を誘ってくれる人は昔から少ない。

だから貴重な機会は受け入れなければ
もう一生誘ってもらえないかもしれない

そして不思議なことに
あれだけ辛くて苦痛だったのにもかかわらず

もう一回行ってもいいかな
とも思えていた。

今考えるとそれがスパイスの不思議なのだ。

もう一度行ってみよう

また何分も並び、何分も待ち
そして食べ始めた

ん?辛い!
でも前回より大丈夫だ!

イケる!いけるぞ!
この暗さ!この香り!このスパイス感!

これがスパイスカリーというものかー!

この経験が
後の人生に大きな影響を与えるとは

プロミュージシャンを目指す僕は
想像もできなかった。

『初めてのスパイスカリー』

■その店内は独特で、相席は当たり前
メニューは手書きのクリアファイル一枚(当時)

チキン、キーマ、ラムだったかの
三種類から、友達おすすめのチキンを。

注文してから10分経っても来ない
15分経っても来ない。

でも誰も何も言わないので
大人しく待っていると

20分後くらいにようやく到着したその姿は
これまで見たこともないような

銀のワンプレートに、黄色いご飯
赤い油に浸かったチキン

そして野菜スープと漬物風のもの二切れ。
いったいこれは何なんだ。

友達にカレーだと言われたから来てみたのに
明らかに違う。これは今までのソレとは程遠い。

こんな裏切られ方は初めてだ。
…っていうかそもそもキーマって何なんだ?(当時)

仕方なくスプーンでチキンを一口。
正直、違和感だらけで美味しいかどうかすらわからない。

そして辛い!辛すぎる!
慌てて野菜カリーを食べると熱い!熱すぎる!

いや、野菜が熱いのではなく
チキンが辛すぎるのだ!

そして水を飲み干し
漬物風(アチャール)のソレを一口

これは最高の箸休めに思えた(スプーンだけど)

しかし残り一切れ!

ヤバイ!

でも友達は平然と食べている。
ここで辛いとは言えない

友達二人が食べ終わりそうになる中
僕も必死にかきこんだ。

もう二度とここに来ることは無いだろう。

『音楽専門学校時代』

■「カレー食べに行こうぜー。」

プロミュージシャンを目指す僕たちの学校の近くに
そのお店は在りました。

「aki辛いの食べれる?」
「もちろん!」

そのお店は異空間でした

そこは11:30オープンで
その時間にはもう10人くらいの行列が

そもそもなぜ路地裏の
そんなところにお店があるのか

なぜそんなところにもかかわらず
行列ができているのか

すべてが不思議だったし
並んで食べるなんて…。

でも友達が少なかった僕にとって
貴重な誘いでもあったので仕方なく待ちました。

空腹もいよいよピークに達しようとしたところ
僕たちの入店が許可され

中では聴いたこともないような
でもインドだとわかる音楽に

嗅いだこともないような香り。
それは今までのカレーとは明らかに違っているし

何より店内が暗く
普通の飲食店のそれとは全てが違っていました。